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 ▼【新刊読み物】『ぼくの見つけた絶対値』  ちゃぴ(WYN−1026) 12/8/5(日) 15:55

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 ■題名 : 【新刊読み物】『ぼくの見つけた絶対値』
 ■名前 : ちゃぴ(WYN−1026)
 ■日付 : 12/8/5(日) 15:55
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   みなさま

タイトルと目次(たとえば、第1章「平行線」、第9章「帯分数」、第13章「隣接角」)を見ていると数学の言葉がいっぱい。作者の遊び心でしょう。その遊び心は本文にも発揮されていて、楽しく読めました。

『ぼくの見つけた絶対値』
"The Absolute Value of Mike"

キャスリン・アースキン(Kathryn Erskine)作
金原瑞人選
代田亜香子訳
作品社

ISBN 978-4-86182-393-0
定価 本体1,800円円+税

 パパは天才的な数学者で、ぼくがエンジニアになるのを望んでいる。でも、ぼくは完全な数学音痴。
 夏休み、大おじさんの家に行ったぼくは、小さな田舎町の、あるプロジェクトに取り組み……。

 絶対値とは、正の数ならの数自身。負の数ならマイナスをとった数。たとえば、3も−3も、絶対値は同じ3になる。その絶対値をタイトルにもつこの作品は、文字通り、人の絶対値をみつける物語だ。短所を裏返せば長所になる。人の弱点は観方によっては強みに変わる。だが負を正にひっくりかえすには、大きなエネルギーがいる。そんなメッセージを、劣等感をもつ「ぼく」マイクが大活躍し、劣等感をひっくり返す、ユーモアたっぷりの物語が伝える。

 登場人物は、主人公マイクをはじめ、みな、かなり絶対値が大きい。つまりは個性豊かだ。ディスカリキュア(算数障害)と自分でいう主人公のマイク、電子工学部の教授だけれど人の顔が覚えられない父親、健康オタクで携帯もパソコンも持っているホームレス、目が悪いのに猛スピードで車をつっ走らせる大おばさん、人形のように座り続ける大おじさん、耳だけでなく頬や舌にもピアスをつけている女子銀行員……。みなユーモアたっぷりに描かれているが、何かしら問題を抱えている。
 どの人も魅力的だが、私がとくに好きなのは、大おばさんのモーだ。主人公マイクを空港にむかえに来た時から、文字の読み違い、勘違いによるギャグを大真面目で連発し、マイクと読み手の私をふりまわし、ペースに巻きこんでくれた(英語の読み間違いを訳して、楽しく読ませるのは難しい。訳者の苦労が偲ばれる)。3Bゲートを33ゲートと読み、「プレイステーション」を「ガスステーションのおもちゃ」と勘違いする。けれど、一見脳天気に見える彼女は、底抜けのお人好しで、周りの人への思いやりにあふれている。
 
 ネット通信といった、子どもたちが得意な現代的ツールをふんだんに盛り込んでいるのも、この作品の大きな特徴だ。ネット社会に生まれ育ったマイクは、まわりの大人たちには思いもつかないことを、さらっとやってのける。ネット通信は、マイクと同世代の子どもたちには身近なものだ。彼らの興味を引きつけるだろう。
 さらに親子間のすれ違いもサブテーマになっている。十代になればだれもが、親との関係に悩むもの。子どもたちの共感が得られるに違いない。親にとっても、我が子への視点をぐるっと変えてみる(足りないところばかりに目を向けず、その子のよさを認める)きっかけとなってくれるだろう。

☆作品社HP
ttp://www.sakuhinsha.com/
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ちゃぴ(WYN-1026)



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