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 ▼【カ賞SL(受賞作)】"The Graveyard Book"  muzu(WYN-1056) 10/7/30(金) 23:51

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 ■題名 : 【カ賞SL(受賞作)】"The Graveyard Book"
 ■名前 : muzu(WYN-1056)
 ■日付 : 10/7/30(金) 23:51
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   みなさん

 こんにちは。
 
 7月ももう終わりですね。お子さんたちが夏休みに入り、慌ただしい毎日を送られている方も多いのではないでしょうか。暑さの厳しいこのごろ、どうぞみなさまもご自愛くださいませ。

 今月末ごろまでを予定しておりました今年の「カ・グ賞候補作を読もう会」も、ぼちぼちお開きの時期なのですが、最後にひとつカ賞受賞作をご紹介させてください。(読むのがすっかり遅くなってしまって……汗、汗、、、)。

 読もう会の終了については、改めてご案内させていただきますね。

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"The Graveyard Book"
by Neil Gaiman ニール・ゲイマン
Bloomsbury 2008
★2009年ニューベリー賞受賞作
★2010年カーネギー賞受賞作 他

 主人公の男の子は、殺し屋ジャックによって家族が皆殺しにされた晩に、たったひとり墓場へ迷い込み、殺人者の手を逃れた。彼は幽霊のオーウェンズ夫妻に引き取られ、生者でも死者でもない紳士サイラスを後見人に、ノーバディ・オーウェンズ――通称ボドと名づけられて墓場で暮らすことになる。墓地の外へ出てはいけないと厳しく言われていたボドにとって、墓場が世界のすべて。生前さまざまな時代と職業に属していた墓場の住人たちからは学ぶこともたくさんあった。だが、人間の少女スカーレットとの出会いによって、彼の中で外の世界への好奇心がふくらむ。成長するにしたがい、広い世界への憧れがさらに強くなるボド。墓所の外ではボドを守りきれないというサイラスを説得し、墓地の外の学校へ通い始めた。学校生活では目立たないようにするはずが、持ち前の正義感から、学校一の悪漢ふたりに立ち向かい、かえって目立ってまずい立場に。さらに、幼い頃に別れたスカーレットとの再会が、未だにボドを狙う殺し屋ジャックと思わぬところでつながり、彼は絶対絶命。ジャックとは一体誰なのか? その背後にある組織とは? 家族が殺された理由は? 守ってもらうばかりだったボドは、自分を、友人を、墓場の住人を守るため、危険に立ち向かっていく。

 ラドヤード・キップリングの『ジャングル・ブック』に着想を得たというゲイマン。舞台をジャングルから墓場へ移したこの物語で、主人公の少年を育てるのは、幽霊たちや、生者でも死者でもない男に人狼など、異界のものたちである。普通なら恐ろしいはずの彼らだが、生者以上に人情味にあふれ、冷気と影のなかにも優しいぬくもりと明るさを感じさせる。墓地の外にいる生きた人間のほうがよっぽど陰湿で恐ろしいと思うほど。そんな彼らから大切に育てられたボドは、まっすぐ素直な性格の持ち主で、人一倍思いやりが強く、勇気のある子どもだ。少しばかり向こう見ずなところもあるが、ボドは失敗を重ねながら、自分を保護してくれる者たちの数百年を経てきた思慮深さをも学びとっていく。子どもの成長物語は多々あれど、この作品の異色の設定、個性豊かに描きわけられた登場人物たちには本当にわくわくさせられた。9月の末にお目見えする邦訳も楽しみな1冊だ。

muzu(WYN-1056)

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