Page 88 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼【新刊】『その歌声は天にあふれる』 ワラビ(wyn-1001) 06/1/18(水) 10:59 ┣Re:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 Chicoco 06/1/18(水) 14:06 ┗Re:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 ニャン公(WYN-2099) 06/1/19(木) 1:04 ┗Re^2:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 Chicoco 06/1/19(木) 17:55 ┗Re:Re^2:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 ニャン公 06/1/19(木) 20:37 ┣Re:Re^2:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 ニャン公 06/1/19(木) 20:38 ┗Re^3:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 Chicoco 06/1/21(土) 0:59 ┗Re^4:【新刊】『その歌声は天にあふれる』 SUGO 06/2/21(火) 23:13 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 【新刊】『その歌声は天にあふれる』 ■名前 : ワラビ(wyn-1001) ■日付 : 06/1/18(水) 10:59 -------------------------------------------------------------------------
『その歌声は天にあふれる』 ジャミラ・ガヴィン作 野の水生訳 徳間書店 2005.12 "Coram Boy" (2000) by Jamila Gavin ☆2000年カーネギー賞ショートリスト ☆2000年ウィットブレッド児童文学賞 18世紀のイギリス。子どもは労働力としてみなされ、虐待、売買されたりすることは日常茶飯事だった。そんな中、トマス・コーラムが、捨てられていく子どもに愛と教育を与えようと、ロンドンにコーラム養育院を設立。すると、訳ありの赤ん坊をひきとってコーラム養育院まで連れていくことを生業とする「コーラム人」が現れた。オーティスという男も、14歳になる息子を連れて行商をする傍ら、コーラムまで連れていくという名目で赤ん坊をひきとり見返りに金を受け取っていた。しかし実際のオーティスは「慈善」の仮面をかぶった悪党だ。 前半となる第1部では、読者はこの時代の息の詰まるような現実をまざまざと見せつけられる。踏みにじられる子どもたちに金のためなら何でもする大人たち、どうしようもなく実在する階級社会――読み進めるのが苦しくなるほど。オーティスとミーシャク親子の身近に絶えず「死」がある生活と、グロスターの大聖堂で聖歌隊をつとめる少年トマスとアレクサンダーの生活が交互に語られ、やがて交わり、第1部の幕がおりる。そして8年後の第2部では、新しい登場人物の二人の少年、アーロンとトビーを迎えて、話は勢いよく動き出し、壮大で重厚な物語へと広がっていく。 登場人物たちがリアリティーにあふれている。作者のこの時代についての並々ならない調査の成果だろう。序文「物語を始める前に」に、この本を書くことになったきっかけと経緯が詳しく語られていて興味深い。第2部に登場する少年アーロンとトビーも魅力的だが、私は第1部のアレクサンダーとトマスのほうがより心に残った。ジェントルマン階級に生まれたゆえの優等生アレクサンダーの苦悩、船大工の息子トマスがアレクサンダーの実家の豪邸を訪れた際の戸惑い。そして、階級を超えたふたりの友情。痛々しいまでに音楽への夢をおいかけていく姿にも心を打たれる。 訳文の文体や言葉の選び方も、作品によくマッチしていて、酒井駒子さんのカバー絵、『その歌声は天にあふれる』という邦題もあわせて、全体的に素晴らしい仕上がりだと思いました。そう、聖歌隊の歌声が全編にあふれてます! ヘンデルの『メサイア』が聞きたくなりましたが、まだ実現していません。これから読まれる方は、是非手元に用意してから読んでね。 作者公式ウェブサイト http://www.jamilagavin.co.uk/ この作品は舞台化されて、2005年11月から2006年1月の期間、National Theater で上演中のようです。 ↓ http://www.nationaltheatre.org.uk/?lid=14061 ワラビ |
ワラビさん 偶然(?)わたしも読み終わりました! (掲示板に書き込もうと思ってPCの前に来たところです〜) とってもよかったです。この2部構成は効果的ですね。 1部から8年経た2部では、この人はもしかして……、この少年はひょっとして……などと想像しながら読み進めました。しだいに登場人物ひとりひとりの運命がからみあい大きなうねりとなって姿を現してきます。後半はもう一気に、とくに最後の数章は泣きながら読みました。訳者あとがきでも触れられていましたが、ほんとうにいろんな形の愛にあふれた物語です。サスペンスフルなところも、とても好み。物語の時代と雰囲気にあった訳文もすばらしいです。 それと、若い読者がこの本を読んで、「命」のことを思ってくれるといいなあ…とおばさんは思うのでした。 Chicoco(WYN-0007) |
ワラビ 様、Chicoco 様; この本、私も原書で読みました。すごい本ですよね。ものすごい衝撃を受けました。何と言っても子ども、それも乳児まで虐待しているその内容に、がーーんでした。18世紀って、イギリスって、こんなだったの?って自分の中のイギリスのイメージががらがらとくずれました。 でも、考えれば、今度くる映画「オリバー・ツイスト」だって、児童虐待の話だし。これって恥ずかしながら、まだきちんと読んだことがないので、また映画観て、読んだ気にきっとなってしまうでしょう。済みません。 邦訳のほう、表紙カバーが酒井駒子さんの絵で最高!原書よりずっといいですよね。 ニャン公(WYN-2099) |
ニャン公さん、こんにちは。 原書で読まれたのですね。 じつはメールマガジン『月刊児童文学翻訳』2001年2月号で未訳読み物としてとりあげられていました。 以前に別の本で(児童書ではなく)、16世紀のイギリスの裕福な家庭で子ども(乳児)がどんなふうに育てられているかがちらっと出て来たのですが、今ではとても考えられないようなことをしてまして……驚きました。「オリバー・ツイスト」わたしもちゃんと読んだことがありませーん(^^;)。 でも、まあ、そういう部分(虐待とか)はストーリー上必要ではありますが、そのショックを補う救い(望みとも言えるでしょうか)があるのを、読後に感じました。 Chicoco(WYN-0007) |
Chicoco 様 ネタばれになってしまうので、詳しくは買いてはいけないのが、残念。出てくる人物全員がとても印象に残っています。作家の力量に圧倒されました。 ストーリーとは直接関係ないかもしれませんが、アレクサンダーの実家、イギリスの田舎のマナーハウスでよかったでしょうか、実際にイギリスに旅行して見に行ってみたいです。 イギリスの児童文学の地を訪ね歩くツアーを探したことがあって、いつかゆっくりとイギリスの田舎を歩くのが夢です。 ニャン公(WYN−2099) |
漢字間違えました。買いては⇒書いては、の間違いです。とほほ。 |
ニャン公さん、こんにちは。 たしかに! 登場人物ひとりひとりがとても印象的ですよね。キャラクターをうまく描きわけられていたと思います。2部で、1部に出ていた人たちの8年後の姿に会うのはなんとも胸きゅん(古い(^^;))でした。 わたしもイギリス行きたいです〜 Chicoco(WYN-0007) |
ワラビさん、Chicocoさん、ニャン公さん、こんにちは。 やっと読めました〜。ニャン公さんのおっしゃるように、こんなにひどいことがあったのかとわたしもかなりショックを受けました。でも、読後は満足感でいっぱいになれてよかったです。 あとがきで野の水生さんが書かれていますが、わたしもトマスにすごく惹かれました。訳もぞくぞくするほどすばらしくて、ただただ感嘆するばかり。あ〜ボーイソプラノを聴きたい! イギリスの児童文学の地を訪ね歩くツアーにもすごく惹かれます。英国には、はるか昔にロンドンで短期ホームステイをしたり、社会人になってから湖水地方をたずねたりしましたが、子どもの手がはなれたらもう一度……とてぐすねひいて待っています(^^;) SUGO *=*=WYN-1012=*=* |