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 ▼【読み物】『殺人者の涙』  おちゃわん 09/10/21(水) 15:30
   ┗Re:【読み物】『殺人者の涙』  からくっこ 09/11/2(月) 20:21
      ┗Re:【読み物】『殺人者の涙』  おちゃわん 09/11/7(土) 22:47

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 ■題名 : 【読み物】『殺人者の涙』
 ■名前 : おちゃわん
 ■日付 : 09/10/21(水) 15:30
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   新刊ではありません。
でも今年のやまねこ大賞に、この本は外せない!という本です。

『殺人者の涙』
アン=ロールボンドゥ  伏見 操 訳
小峰書店 2008.12  ¥1575


 チリの最南端、ここを過ぎれば足もすくむ断崖絶壁がそそり立ち、その先に身も凍る荒海が待ち受けるだけ。訪れるものは探険家か、研究者か、物好きな旅行者か。そんな場所に主人公パオロ少年は生きていた。両親とともに。ところがそこへアンヘル(天使)という名を持つ殺人者が追っ手を逃れてやってくる。彼は着くや否や、まるで自分に課せられた唯一の行いでもあるかのように、アンヘルの両親を手にかける。そうしてアンヘルとパオロの奇妙な生活が始まる。


 こんな始まりだと、ほとんどの方はひるんでしまうのでは?私もその1人。
 でも気になって、気になって、やっと読むことができた。もう出版から半分以上が過ぎていた。読み始めると、たちまち物語の舞台である厳しい自然の中にワープしてしまった。ぐいぐいひき付けられる。生きていくことはなんて、切なく、辛く、愛おしいものなんだろうか。
 愛のかけらもなく生きてきたアンヘルは、パオロとの生活の中で少しずつ変わっていく。語る言葉を持たない彼の有様を狂おしくも凄まじく描き出す。こんなに荒削りで劇的な変化ととげる人物は、ちょっとお目にかかれない。彼を「人」にしていくのは他ならぬパオロ。彼の無垢な魂にも驚嘆する。

 物語はその生まれた場所と時代の影響ぬきに考えることはできないと思う。物語の後半は、チリという国のおかれた実情を抜きにしては考えられない。けれども、地球の反対側でぬくぬくと暮らしているものの一人である私の心をこんなにも揺さぶるのは、ここにまじりっけのない愛の形が描かれ、その愛によって生きる、または生かされているということが示されているからではないか。と思う。


おちゃわん

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 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:【読み物】『殺人者の涙』  ■名前 : からくっこ  ■日付 : 09/11/2(月) 20:21  -------------------------------------------------------------------------
   おちゃわんさん

 休日だった昨日、手に取りました。あっという間に物語の中に没入して、気づいたら数時間で読了していました。読み終えてから、しばし茫然としていました。これは、すごい本ですね。

 これほどまでに荒々しく純粋な愛を、わたしは見たことがないような気がします。アンヘル、パオロ、それぞれが人になっていく物語と読んだのですが、ああ、なんか、こうやってわたしのたどたどしいことばで表現するとぜんぜん違うものみたいで……。人を人たらしめる、文字や音楽の力の大きさも感じました。リカルドの存在がよかったです。おちゃわんさんがお書きのように、いきなり凄惨な場面から始まりますし、アンヘルはまぎれもなく人殺しですが、全編を通して残酷な感じがしないのは、この物語がどこか、童話というか、民話風の雰囲気をたたえているからでしょうか。

 読んでいるあいだ、ずっとあの荒野を吹きすさぶ風の音が聞こえているような気がしました。地上にはこんな場所があるのですね。すばらしい作品でした。

からくっこ

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 ───────────────────────────────────────  ■題名 : Re:【読み物】『殺人者の涙』  ■名前 : おちゃわん  ■日付 : 09/11/7(土) 22:47  -------------------------------------------------------------------------
   からくっこさん


>しばし茫然としていました。これは、すごい本ですね。

ああ、良かったです。ありがとうございます。
そうでしょ〜。そうなんです。すごい本なんです。

> 人を人たらしめる、文字や音楽の力の大きさも感じました。

そうなんですよね。ここのところもすばらしい。


中南米の作家さんの本は、少しだけ読んだことがあるのですが、
情熱的というよりも、どこか熱に浮かされた病的なものすら感じる独特の強烈さが、
あとあとまでも濃密に、心に残っています。

中南米を舞台とした児童文学も、あまり目にしてないですから
これからが楽しみです。

おちゃわん

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