Page 652 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼新刊読み物】『フィッシュ』(鈴木出版) おちゃわん 08/4/6(日) 18:33 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 新刊読み物】『フィッシュ』(鈴木出版) ■名前 : おちゃわん ■日付 : 08/4/6(日) 18:33 -------------------------------------------------------------------------
『フィッシュ』L.S.マシューズ 作 / 三辺律子 訳 鈴木出版/2008.2/¥1600+税 ISBN978-4-7902-3209-4 干ばつに苦しみ、紛争が絶えない、どこかの国だ。国土も人々の心も疲れきっている。外国から救援活動をしにきたのが、タイガーの両親だ。けれどもその村にも戦闘が及ぶ状態になり、両親とタイガーは、人々を送り出し、一番後に村を出て、国境を目指す。国境さえ越えれば、本国に連絡をとり、帰国できる。彼らを導くのは、老練なガイドと彼のロバだ。長い旅がはじまる。 とても不思議な話だ。村を後にするとき、泥水のなかに魚を見つけ、タイガーは魚をもって逃げる。題名はそれにちなんだもの。どこの国ともわからないし、だれの名前も明らかではない。主人公の名タイガーさえ、呼び名なのだ。でも、この本を読んだ人の心の中には、きっとどこかの国が思い浮かぶだろう。こうしている間にも世界のどこかで、だれかがこんな状況にあるかもしれない。読み終わったあと、心から戦争は嫌だと思う。 だが、それだけに終わらない。この本はファンタジーともいえる一冊なのだ。経験あるガイドと、彼のロバ、それにタイガーの持つ魚。これらが不思議な存在感で描かれ、『希望』を見せてくれる。極限状態で、家族を愛すればこそ湧き上がる迷いと葛藤を、作者は如実に描いている。 おちゃわん <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 6.0; Windows NT 5.0)@p1029-ipbf408kyoto.kyoto.ocn.ne.jp> |