Page 1193 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 通常モードに戻る ┃ INDEX ┃ ≪前へ │ 次へ≫ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼【カ賞LL】"The Memory Cage" キジトラ(WYN-2259) 12/5/7(月) 11:40 ─────────────────────────────────────── ■題名 : 【カ賞LL】"The Memory Cage" ■名前 : キジトラ(WYN-2259) ■日付 : 12/5/7(月) 11:40 -------------------------------------------------------------------------
続けてロングリストから1作品ご紹介いたします。 普段の読書傾向とはちがうタイプの作品でしたが、「読もう会」のおかげで読了できました。 原書読破マラソンにもアップしています。 ----------------------------------------------------- “The Memory Cage” by Ruth Eastham (2011) ボスニア内戦で孤児となったアレックスは、6年前からスミス家の養子としてイギリスのケント州で暮らしている。アレックスの一番の理解者はおじいちゃんだが、アルツハイマー病による物忘れがひどくなる一方だ。ケアハウスに送られるのを阻止するため、アレックスはおじいちゃんの記憶を呼び起こそうと、昔の写真をつかってスクラップブックづくりを始める。だが、おじいちゃんには思い出したくない過去があった。鍵のかかった屋根裏部屋、妻と弟の死、戦争の記憶。家族に影を落とす秘密とはいったい? 13歳の少年の一人称で語られる崩壊寸前の家族の姿に息がつまり、正直なところ中盤にたどり着くまでは読むのが苦しかった。養子先の兄がみせるあからさまな敵意、心のよりどころである祖父を失いそうな主人公の不安感――安らぎとは程遠い重苦しさがただよう家族風景だ。祖父に悪意を抱く人々の存在にも胸がしめつけられた。執拗に繰り返される血や濁流の直喩が死のイメージとなり、主人公と祖父それぞれの戦争の記憶へとつながっていく。謎解きが進み、展開が加速してようやく、ページをめくる手が早くなった。結末は無難ともいえるが、つらい記憶も決して忘れてはいけないという作者のメッセージは明確だ。真実と勇気への信念、断固たる反戦への思いがこめられた作品だと思う。 キジトラ(WYN-2259) <Mozilla/4.0 (compatible; MSIE 7.0; Windows NT 6.0; SLCC1; .NET CLR 2.0.50727; ...@fch176053.fch.ne.jp> |