過去ログ

                                Page    1163
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   通常モードに戻る  ┃  INDEX  ┃  ≪前へ  │  次へ≫   
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ▼【読み物】魔法の泉への道  みーこ 12/2/29(水) 23:22

 ───────────────────────────────────────
 ■題名 : 【読み物】魔法の泉への道
 ■名前 : みーこ
 ■日付 : 12/2/29(水) 23:22
 -------------------------------------------------------------------------
   タイトルや、151ページという薄さからは、想像もできない内容の本でした。

魔法の泉への道
リンダ・スー・パーク著 金利光訳
あすなろ書房
978-4-7515-2221-9

 2008年のスーダン南部。ヌアー族の少女ナーヤは、毎日歩きずくめだ。午前と午後の水くみで1日のほとんどが終わってしまう。池までの2往復を1年のうち7か月、太陽が容赦なく照りつけるなか、1日も欠かさず繰り返さなければならない。乾季になって池が干上がると、一家は村から3日歩いたところにある湖近くに移り住み、ナーヤは残りの5か月をまた水くみに費やす。ここでは歩かなくてもいい代わりに、湿った湖の泥を手で掘り返し、穴の底から水がしみ出してくるのを何時間も待つのだ。

 1985年のスーダン南部。ディンカ族の少年サルヴァは、授業中に政府軍と反乱軍の内戦に巻き込まれ、同じディンカ族だが見知らぬ人々とともに東へ向かうことを余儀なくされた。道中では大親友ができ、叔父と再会したものの、エチオピアの難民キャンプへたどり着く前にふたりを失ってしまう。そのキャンプも6年後に閉鎖され、追い出された難民たちはスーダンとの国境沿いにある川に追い込まれて、多くが兵士の銃撃やワニの犠牲となった。そして九死に一生を得たサルヴァは、いつしか1500人ほどに膨れ上がったグループのリーダーとして、ケニアを目指すことになる。

「この本はわたしの実体験を元に書かれました」。NPO "Water for Sudan.Inc" 設立者のサルヴァ・ドゥットさんによる『刊行に寄せて』の1文だ。多少脚色されてはいるが、ほとんどが彼の体験そのままだという。過酷とか壮絶とかいう言葉では到底言い表せないほどの状況下で、彼は砂漠を越えたときの叔父の励ましを胸に、1歩ずつ、1日ずつ乗り越えてきたのだ。折れそうになる心を奮い立たせ、ひとつずつ解決しながら事にあたっていたことはわたしにもあった。しかし彼とわたしとでは、そこに込めた思いの深さがあまりにも違い、愕然とさせられる。

 1985年に11歳だったサルヴァと、2008年に11歳だったナーヤ。部族も違い、交わるはずのなかったふたりの人生は、2009年に出合う。希望を持ち続け、決してあきらめないというサルヴァの強い思いが実現させた成果のひとつである。ディンカ族とヌアー族の居住地には、これまでに数十もの井戸が掘られたそうだ。

 東日本大震災後、わたしは給水車の長い列に並びながら、水くみで1日がつぶれてしまう子どもたちのことを思い、自分の幸せをかみしめていた。これだけの災害のあとでさえ、家から5分歩いてただ待っていれば、きれいな水が手に入るのだから。

 独立を果たしたものの未だ混乱が続く南スーダンでは、日本の自衛隊が5月からインフラ整備にあたる予定だ。誰もがきれいな水をいつでも好きなだけ飲める。そんな日が1日も早く訪れることを祈らずにはいられない。


★☆ みーこ WYN-1020 ☆★

<ZonchBrowser@softbank221029235185.bbtec.net>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━    通常モードに戻る  ┃  INDEX  ┃  ≪前へ  │  次へ≫    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━                                 Page 1163