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 ▼【新刊読み物】ユミとソールの10か月  ちゃぴ(WYN-1026) 11/6/7(火) 5:55

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 ■題名 : 【新刊読み物】ユミとソールの10か月
 ■名前 : ちゃぴ(WYN-1026)
 ■日付 : 11/6/7(火) 5:55
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   みなさま

 作品社の金原瑞人選オールタイム・ベストYA第四弾!です。

『ユミとソールの10か月』
"I WANNA BE YOUR SHOEBOX"

 クリスティーナ・ガルシア(Cristina Garcia)作
             (Garcia の i の上に´)
 金原瑞人選
 小田原智美訳
 作品社

 ISBN 978-4-86182-336-7
 定価 本体1800円+税

 ユミは、ロサンジェルスの海辺の家で小説家の母さんと暮らす中学8年生。サーフィンと音楽を愛している。週末には、離婚した父さんと会い、父さんの両親、つまりユミの祖父母のソールとヒロコの家に行く。父さんは売れないロックバンドをやっている。ソールはユダヤ人で、ヒロコは日本人。母さんはキューバ人(グアテマラ人の血も少し混じっている)だ。

 大好きな祖父ソールに癌の宣告がくだされた。そのうえ、母さんには恋人ができ引越ししなければならないかもしれず、学校では、区からオーケストラ活動停止が言い渡され……。ままならぬことが一気に押し寄せてきた

「なにもかも永遠に変わらなければいいのに」と思うユミだが、ソールから彼が歩んできた人生の話をきき、人生の変化に立ち向かっていく。

 ユミの語りに、祖父ソールがユミにきかせる語りがはさまる形で、物語は進行していく。ソールは92歳。世界大戦の前に生まれ、波乱万丈の人生を生きた。いいときもあれば、悪いときもあった。後悔することもあるけれど、つねに自分のやり方で生きてきたソールの話は、あちこちで壁にぶつかったユミに、前に進む力を与えてくれる。

 ストーリーの中心となるのは、学校のオーケストラ存続に向けての活動だが、そこに、実にさまざまなことが絡まってくる。母親や再婚相手との関係。父親のこと。学校の気になる男の子。キューバ人の母方の祖父母と叔母。叔母がネットでみつけたグアテマラの赤ちゃんの養子縁組。さらにソールの思い出話とユミへの言葉。これらが連なって進み、ラストではそれぞれ満足できる結びになっている。多様な要素を盛り込みながら、リアリティのあるひとつの物語にしあげたことに、作者の巧みさを感じる。

 大人になりかけているユミは、大人のいいなりではなく、自分の意思を持っている。小説家としてある程度の地位を築いている母親や、キューバ人の血が入っていることを押し付けてくる祖母には批判的な目を向ける。一方で、音楽の才能を生かしきれず、ピアノの調律の仕事でなんとか生計をたてている父親には同情的で、音楽をはじめ共感することも多い。

 そんな父を、祖父ソールは気がかりに思っている。父も親の期待に沿えない自分をもてあましている。ふたりを深く愛し理解するユミの思いが力となって、親子関係が変化していくところに、わたしはもっとも胸を熱くした。

 自分の人生を歩きはじめる若い人たちに読んでほしい1冊。
 
☆メープルストリート紹介ページ
ttp://www.litrans.net/maplestreet/p/sakuhin/index.htm

☆作品社HP
ttps://www.tssplaza.co.jp/sakuhinsha/
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ちゃぴ(WYN-1026)


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